肥満症とは?|原因・リスク・治療方法
肥満症は体重の増加にとどまらず、健康に悪影響が及んでいる状態です。
過剰な体脂肪の蓄積による影響は、代謝異常による生活習慣病をはじめ、心臓や血管の病気など全身に及びます。
このページでは、肥満症の原因やリスク、治療法について詳しく解説しています。
体型が明らかに変化してきた人はもちろん、肥満症にならないために予防意識を高めるためにも役立ててみてください。
目次
肥満症とは
肥満症とは、BMI25以上の肥満(過体重)状態だけではなく、肥満が原因ないし肥満に関連する病気を1つ以上発症している状態です。
体脂肪の過剰な蓄積が健康に悪影響を及ぼし、合併症がある、またはそのリスクが予想されるため、医学的なアプローチによる減量が必要になります。
- 肥満症の診断フローチャート
-
BMI25以上35未満
↓
健康障害あり or 内臓脂肪の蓄積あり(内臓脂肪型肥満)
↓
肥満症
BMI35以上あり、健康障害や内臓脂肪の蓄積が認められる場合は「高度肥満症」となります。
また、内臓脂肪型肥満は、ウエストと代謝異常が基準値から外れると「メタボリックシンドローム」となります。
肥満症とメタボリックシンドロームの健康リスクの違い
肥満症とメタボリックシンドロームのリスクの違いは、以下の表のとおりです。
肥満症 | メタボリックシンドローム | |
---|---|---|
リスク | 生活習慣病、心血管疾患、呼吸器疾患など | 生活習慣病 動脈硬化のリスクが高い |
判断基準 | BMI/ 肥満が原因あるいは関連する病気が1つ以上 |
ウエスト/ 2つ以上の代謝異常(発症含む) |
健康状態 | 病気の状態 | 生活習慣病予備軍あるいは生活習慣病を発症している状態 |
リスクだけで見ると、肥満症は健康障害の種類も多いのでリスクが高いようにも思えます。
しかし、メタボリックシンドロームも、2つ以上の代謝異常あるいは生活習慣病を併発している状態です。
肥満レベルには個人差もあるので、2つを比較してどちらの方がリスクが高いとは一概には言えません。
ただ、強いて言うのであれば、動脈硬化によって心臓や血管といった生命に関わる病気につながりやすいのはメタボリックシンドロームと言えるでしょう。
メタボリックシンドローム(メタボ)について知ろう|診断基準・原因・改善方法
肥満症で健康障害が起きる原因
肥満症で健康障害が起きる原因となるのが、2種類の体脂肪です。
■内臓脂肪
内臓脂肪は、胃や腸などお腹まわりの臓器につく脂肪です。炎症を起こすことで代謝機能に影響を与えるため、過剰な蓄積は生活習慣病のリスクを高めるとされています。
■皮下脂肪
皮下脂肪は、皮膚の下につく脂肪です。いわゆる贅肉とも呼ばれ、健康リスクは内臓脂肪に比べ低いものの、睡眠時無呼吸症候群や変形性関節症などのリスクがあります。また過剰な蓄積が、閉経後のがんリスクにもつながる可能性があることもわかっています。
体脂肪は身体のエネルギー源になるので、一定の量は必ず必要です。
しかし、過剰に蓄積されると健康リスクを高め、肥満症のような病気の原因になってしまうので体型管理は非常に重要です。
肥満症の診断に必要となる11種類の健康障害
1.耐糖障害(2型糖尿病や耐糖能異常など)
2.脂質異常症
3.高血圧
4.高尿酸血症・痛風
5.冠動脈疾患(心筋梗塞・狭心症)
6.脳梗塞・一過性脳虚血発作(TIA)
7.非アルコール性脂肪性肝疾患
8.月経異常・女性不妊
9.閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
10.運動器疾患(変形性関節症、変形性脊椎症)
11.肥満関連腎臓病
肥満症の健康障害は全身に及びます。
代謝異常をはじめ、心臓や血管、肝臓などさまざまな臓器に悪影響を与える可能性があり、体重増加の負荷が関節へのダメージになってしまうこともあります。
肥満症の診断には含まれないが関連する健康障害
■悪性疾患
・大腸がん
・食道がん
・子宮内膜がん
・膵臓がん
・腎臓がん
・乳がん
・肝臓がん
■良性疾患
・胆石症
・静脈血栓症・肺塞栓症
・気管支喘息
・皮膚疾患
・男性不妊
・胃食道逆流症
・精神疾患
日本人の死因のトップである「がん」をはじめ、男性機能の低下やメンタルヘルスの分野にも影響が及ぶ可能性もあります。
高度肥満症で注意すべき健康障害
・呼吸障害(閉塞性睡眠時無呼吸症候群)
・運動器疾患(変形性関節症や腰痛症)
・肥満関連腎臓病
・心不全
・静脈血栓
・皮膚疾患(黒色表皮腫)
高度肥満症の多くは心理社会的な問題を有しており、「肥満=自己責任」という誤った認識から治療に結びつきづらくなるケースもあります。
日常生活に大きな支障をきたす可能性もあることから、早期の医療介入が必要です。
肥満症の治療
肥満症の治療の目的は、身体の見栄えを良くするためではなく、内臓脂肪を減少させて複数の健康障害を改善するために行われます。
そのため、減量目標も以下のとおりとなっています。
- 肥満症の減量目標
-
肥満症:3~6ヵ月で現体重の3%以上
高度肥満症:現体重の5~10%(合併する病気により異なる)
体重の減少が大きいほど、血糖、血圧、脂質、尿酸、肝機能の改善度は大きいことがわかっています。
しかし、肥満症の人は減量に成功により健康障害の改善がみられても、リバウンドによって再び悪化しやすいです。
無理な減量は続かず、健康状態にも悪影響することもあるので、まずは改善がみられる現体重の3%を目標に減量することが重要です。
肥満症の治療では具体的にどのようなことが行われるのか、もう少し詳しく見ていきましょう。
食事療法
肥満症治療の基本の1つとなるのが、食事療法です。
減量には、摂取するエネルギーを制限することがもっとも有効とされており、目標体重に対して以下の方法で1日の摂取カロリーを決めます。
■肥満症
25kcal×目標体重(kg)以下
■高度肥満症
20~25kcal×目標体重(kg)以下
■PFCバランス(栄養バランス)
炭水化物:50~65% タンパク質:13~20% 脂肪:20~30%
また、上記では十分な減量が得られない場合には、600kcal/日以下の超低エネルギー食も考慮されます。
運動療法
食事療法と並んで肥満症治療の基本となるのが、運動療法です。
運動は、肥満症に関連する死亡や心疾患発症・重症化のリスクを低下させることがわかっています。
- 推奨されている運動療法
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種類:有酸素運動(レジスタンス運動の併用も望ましい)
強度:軽度~中強度(楽~ややきつい程度)
時間:1日30分以上(短時間の積み重ねでもよい)
また、レジスタンス運動を併用する場合は毎日行わず、週2〜3日、上半身・下半身を含んだ8〜10種類を行います。
負荷としては10〜15回を1セットとして行うところからスタートし、身体が慣れてきたら8〜12回を繰り返す負荷で1〜3セット行うことを目標とします。
肥満症の人にとって、身体を動かすこと自体ハードルが高く、膝や腰、関節などへの負担がケガのリスクにつながることもあります。
いきなり取り入れることは難しいので、少しずつ運動を取り入れつつ、最終的な目標として行うことが推奨されます。
薬物療法
食事や運動で減量目標が達成されない場合、薬物療法の併用が検討されます。
- 治療対象者
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・高度肥満症で健康障害が1つ以上
・肥満症で内臓脂肪面積が100cm²以上かつ健康障害が2つ以上
また、治療に用いられる薬は糖尿病の有無によって異なります。
①糖尿病がある場合に用いる薬
・GLP-1受容体作動薬(内服または自己注射)
・SGLT2阻害薬
・膵リパーゼ阻害薬
・ビグアナイド薬(BG薬)
・αグルコシダーゼ阻害薬
・スルホニル尿素薬(SU薬)
・インスリン製剤
・チアゾリジン薬
②糖尿病がなくても使用できる薬
・リパーゼ阻害薬
・マジンドール
いずれの薬も一定の減量効果が認められており、基本は糖尿病治療薬が中心となっています。
また、一部の薬は条件を満たすことで保険適用になるので、健康状態や体質なども考慮し、医師と相談の上で適切な薬が処方されます。
外科手術
高度肥満症になると、胃を小さくする外科手術により長期的な減量を維持するケースもあります。
以下にすべて当てはまると、外科手術の適応基準を満たします。
- 外科手術の対象者
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・6ヵ月以上の内科治療によっても十分な効果が得られない
・BMI32.0~34.9
・以下のうち2つ以上を合併している状態
– HbA1c8.0%以上の糖尿病
– 高血圧症(基準値あり)
– 脂質異常症(基準値あり)
– 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(基準値あり)
日本では2014年から「腹腔鏡下スリーブ状胃切除術」が保険適応になり、体重減少だけでなく、糖尿病などの合併症への改善効果が高いことが報告されています。
そのため、肥満症に対する外科治療は「メタボリック・サージェリー(代謝を改善する手術)」とも呼ばれています。
肥満症予備軍ならメディカルダイエット
肥満症になる前であれば、食事の見直しと運動を取り入れることで十分減量できます。
しかし、太る生活に身体が慣れている中で、いきなりライフスタイルを一変させるのは簡単ではありません。
無理をすればリバウンドする可能性もあるので、自己管理をサポートする意味でメディカルダイエットに挑戦してみるのも1つです。
■ダイエット薬
抗肥満薬と呼ばれるダイエット薬を用い、飲むあるいは皮下注射を行うことで代謝を改善することで体重減少を目指す治療治療です。
■医療痩身マシン
医療痩身マシンは、気になる部位に合わせて、注射あるいは医療機器を用いて部分的に体脂肪の減少を目指す治療です。
これらの治療を医師の管理下で行い、全身痩せや一般的なダイエットではできない部分痩せを実現します。
メディカルダイエットとは?一般的なダイエットとの違いやメリット・デメリットをご紹介
肥満症についてのまとめ
最後に、肥満症のポイントについてまとめていきます。
- 肥満症についてのまとめ
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・肥満症は病気
・さまざまな健康障害のリスクがある
・治療の基本は食事と運動
・十分な体重減少が見られない場合には薬物療法や外科手術も選択肢
・肥満であればメディカルダイエットで予防可能
肥満状態から体脂肪がさらに蓄積されてしまうと、身体に悪影響を及ぼすようになります。
そのため「いつか痩せる」という意識ではなく、早めに体重管理を習慣化して、BMIや体脂肪率を健康リスクの低い適切な数値にまで戻すことが大切です。
太っている=見た目の問題と思われがちですが、蓄えられすぎた脂肪が健康状態を脅かすリスクを高めます。
体型の変化が目立つようになってきたら、自己管理を始め、食事や運動がストレスになる場合にはメディカルダイエットも検討してください。
よくある質問
肥満症は病気ですか?
肥満症は病気と考えられています。
これは肥満症が見た目の問題を超え、過剰に蓄積された体脂肪が健康状態に悪影響を及ぼしているためです。
さまざまな合併症が起こりうるので、肥満症と診断された場合は減量治療の対象とされています。
肥満症の健康リスクにはどのようなものがありますか?
肥満症の健康リスクとして代表的なのが、糖尿病や高血圧、脂質異常症といった生活習慣病です。
また、心臓や血管、肝臓、体重の負荷によって関節にダメージが及ぶこともあり、全身に悪影響が及んでしまうリスクがあります。
肥満症はどのような治療が必要になりますか?
肥満症の治療としては、食事療法と運動療法が基本です。
これらの治療により十分な体重減少がみられない場合には、薬物療法や外科手術なども選択肢に入ってくるようになります。
なぜ肥満症は健康に悪影響を及ぼすのですか?
肥満症は過剰に体脂肪が蓄積されており、特に内臓脂肪はサイトカイン(生理的活性物質)の分泌により炎症を起こします。これにより代謝異常が起きたり、内臓の機能低下を招いてしまうことで健康に悪影響を及ぼします。
肥満症を予防するために日常生活で気を付けるべきことは?
肥満症を予防するためには、ライフステージに合わせた体重管理を実践することが大切です。
加齢により身体は変化していくので、以前と同じライフスタイルを続けてしまうと体脂肪が蓄積されやすくなります。
食事によるコントロールも重要ですが、肥満は睡眠不足やストレス、喫煙習慣などさまざまなことが原因になります。
できることから1つずつ見直し、太らないための習慣を身につけていきましょう。